2016年8月28日日曜日

Oathbreaker/Eros|Anteros

ベルギーはヘントのハードコアバンドの2ndアルバム。
2013年にDeathwish Inc.からリリースされた。
2008年に結成された4人組のバンドでボーカルをとるのは女性。
このアルバム発売当初幾つかのサイトでレビューされていた事もあり名前は知っていたが、なんとなくスルーしていた。
2016年に新作がリリースされるにあたり新作に収録されている曲が幾つかネット上で公開されているのだが、それがあまりに良かったため目下の最新作を購入した。タイトルの「エロース|アンテロース」はそれぞれギリシア神話の愛の神のことみたい。

新曲のビデオがこちら。ブラックメタルに取り憑かれたハードコアという感じでトレモロの嵐が凄まじい。女性ボーカルはなりふり構わない叫びから、情念こもったクリーンまでこなし、凄まじいテンションで突っ走る8分間。これはちょっとすごい。

じゃあこちらの音源はどうなのかというと基本的な路線は同じ。ブラッケンドハードコア。女性ボーカルといってもドイツのSvfferの様なパワーバイオレンス/グラインドコア要素はそこまで強くない。Convergeは情け容赦のないハードコアだが、その根底には間違いなく色々な感情が渦巻いている。このバンドはそういった意味ではConvergeに似ている。多分に感情的なので激しい音楽なのだがとても共感しやすい。楽器の音も真っ黒い壁の様な最近のクラストの様などうしようもない終末感はなく、生音を活かした感じでまだ血が通っている感じ。なるほど音の迫力で劣るのだろうが、なんといっても感情が乗りやすいエモーショナルなサウンドだと思う。この音の作り方は非常に好きですね。
女性ボーカルは8割型叫んでいる。ただ叫びすぎて男性だか女性だか分からない類いのものではなく、間違いなく女性が叫んでいるんだなと分かるもの。残りの2割でクリーンを入れてくるのだが、ぽつぽつ呟くような恐ろしげなものでメロディ性は全体的にほぼ皆無。女性の強みを活かした、というとあまり良くない言葉かもしれないが、男性とは明確に異なる情念の強さみたいなものがうり。これが脆さもある演奏とすごく合う。やや不安定というか想いが強すぎる故に病んだような物語性があるとても良いボーカル。
演奏の方は洪水の様なトレモロリフはいかにもブラッケンドな感じだが、全編トレモロの嵐というわけでもなくかなり練られている。これがかなりかっこ良くてとくにボーカルが入っているときのバッキングでアルペジオを投入して来たりとハードコアにしてはかなり凝っていて音の数が多かったり、逆に伸びやかに演奏したりとかなり多彩で、なにより大変メロディアス。ボーカルがヤバい分、メロ成分はギターが一手に担っているといっても言いかもしれない。ブラックメタルだとトレモロが非常にメロいことはありがちだが、トレモロ意外でもキャッチーさを出してくるのは面白い。音の幅も低音〜高音と広くて単調になりがちな曲が適度に光っている。(勿論ぴかぴかしすぎてはいない。)
ジャンルとしては間違いなく(ブラッケンド)ハードコアなのだろうが、分かりやすいスタイルに迎合しないで自分たちの音楽性を確立させている印象。

新曲のビデもでもそうだけど、ライブでも濃紺のローブの様なものを着込んだりと結構見た目にも気を使っているみたい。これは新作でぱーっとブレイクするかもですね。待ちきれないという方はまずこちらの音源を是非どうぞ。私はなんで発売当時に聴かなかったんだろうと思うくらい気に入りました。

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