2016年10月22日土曜日

Mouth of the Architect/Path of Eight

アメリカ合衆国オハイオ州デントンのポストメタルバンドの5thアルバム。
2016年にTranslation Loss Recordsからリリースされた。
2013年の「Dawning」から3年ぶりの新作。
2003年に結成されたバンドで私は2008年の3rdアルバム「Quietly」を買って以来のファン。ジャケット通りの灰色の世界のスラッジっぷりにすっかりまいってしまいそれから新作が出るたびに買って聴いている。wikiを見るに前作からの編成のアップデートとしてギター/ボーカルが脱退し、新しいメンバーが加入しているようだ。

「八の小道」と名付けられた今作はその名の通り8つの曲が収録されている。まず驚いたのが曲の長さ。一番長くて7分20秒。アルバムを通して44分だから1曲あたりだいたい5分ちょい。まあ普通のバンドならだいたいこんなもんだと思うのだが、このバンドはスラッジとポストメタル地でいくスタイルなのだ。むしろ短いくらいだろう。過去の音源でもだいたい平均すると10分いかないくらいではなかろうか。明確にコンパクト化している。
偉大な先達であるNeurosisに影響を受けつつも荘厳な密室的さを排し知的なポスト感を強め、強大な音圧で圧殺リフを奏でながら、ただただ暴力性に舵をとるのではない、まさに灰色な世界観を構築しているバンドでアートっぽさもありつつ、同時に激しい痒い所に手が届くイメージ。
今作では短くした尺で曲をスッキリさせてきたが、速度は変わらないし、たとえばアンビエントなパートなどは相変わらず贅沢に時間をとって披露しているので単純にもともとバンドの持っていた音像をより濃密に仕上げてきた印象。異なる層を一つの曲にまとめてくる多重構造は相変わらずで、クリーントーンのギターのアルペジオや空間的なシンセ音と地を揺るがす轟音のアンサンブルの対比、クリーンボーカルとスラッジ/ハードコア色の強い男臭い咆哮(複数のメンバーが兼任しているのでボーカルにも色があってそこも良い。やっぱりNeurosisっぽい。)の対比に加えて女性のボーカルを大胆にフィーチャーしている。アンビエントという成分はありつつも、形式としてたジャンルを貪欲に取り込んでいくというよりは、ポスト/スラッジでの限界を探る、という観点で曲が作られており、異相がありつつも曲としてまとまりがあり、どの部分を切って聴いてもかっこよく統一感がある。
尺だけでなく、ややキラキラしたようなギターなどは灰色の世界に色彩を持ち込む鮮やかさがあり、埃っぽいスラッジという意味ではたまにMastodonを彷彿とさせる。クリーンボーカルもここぞという時には明快なメロディをたどるようになり、轟音との対比と明暗はっきりとしつつも複雑な曲構造いう意味ではThe Oceanっぽくなったと思う。これらの変化の兆しは前作「Dawning」からの延長線上にあって、前作聞いたときにはMouth of the aArchitectが明るくなった!とだいぶ驚いたことを思い出した。今作はさらにその報告性が強められ、そしてクオリティが上がってきた。1曲目「Ritual Bell」に見られるような東洋(の宗教)っぽいリフやフレーズは健在で知的な個性を生かしつつも、ジャケットアートの深紅のように灰色の世界に色が持ち込まれた。それも揺籃期の地球のように荒々しいもので、これから何か新しい生命が生まれるような強烈なエネルギーが混沌と渦巻いているような感じだ。

これは化けたな〜という感じ。ただひたすら虚無的な「Quietly」に見せられた身としては正直そちらに後ろ髪引かれることも事実。過去を顧みない前傾姿勢に敬意を払いつつこれはもう両方楽しむのが正解であろうと思う!!というわけで非常にカッコ良い!のでオススメ!!でございます。

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