2017年2月11日土曜日

ネム/ピカデシカ

日本は大阪のサイケデリック・ロックバンドの1stアルバム。
2015年にHYPE Recordsからリリースされた。
ネムは2010年に結成されたバンドでメンバーチェンジを経てリリースされたのがこのアルバム。今は三人組。特に知識はなかったがディストロで興味を持って購入。

まずはモノトーンかつ情報量の多いアートワークが良い。サイケデリックって何か?というとキーワードは渦かもしれないなと思っていたので、このジャケットは本当に良いと思う。
内容としてはサイケデリックロックだ。ヘヴィだが変幻自在なギターサウンドが分厚いのでシューゲイザー要素もあるが、幻想的であっても明確に耽美ではない。しっかりとしたドラムとベースが土台をささえ、その上にギターが縦横に走る。例えばEarthlessなんかを彷彿とさせる。ドラムとベースは激しく派手なプレイというよりはミニマルにミニマルにしっかりと手堅いビートを刻んでいく。いつも思うのだが自由に漂う幻想の世界も以外にそれを支えるしっかりとした屋台骨が必要というのは非常に面白い。人間は浮かないものなのか。ギターは強烈に歪ませたものでこれが縦横無尽に走りまくる。リフはメタル的では全くない。単音を多用して時にはソロなのかリフなのか(利き手の知識の問題もあるだろうが)判然としない。シューゲイザーなら空間的な処理を音に過剰にかけるのだろうが、このバンドの場合はあくまでも音はディレイやエコーがありつつも、あくまでもソリッドだ。低音をことさら強調するバンドではないのでその切れ味は鋭い。運指も音の数も多い。ミュートを多用したリフの頻度が高くないので、音の切れ目がない。この音の連続性はノイズに近いのではなかろうか。変幻自在で刻一刻と切れ目なくその姿を変えていく。その職種が導く先が桃源郷でこれをサイケデリアと呼ぶのだろうか?サイケデリックの醍醐味だ。ここまでだと結構交渉で素人お断りな雰囲気を感じさせるけど、聞いてみるとそんなことが全然ないのがこのバンドの最大の魅力だろうか。前述のEarhlessはスペーシーでありながらもデザートな香りの埃っぽいぶっといロックをそこに据えていたから、自由でありながらも芯があって強い。このネムというバンドはそこをオルタナティブ・ロックを持って生きているような気がする。模糊としたサイケデリックと目の覚めるようなソリッドなロックの合体である。曲によってはもうリフからして高揚感のあるオルタナティブ感に満ちていたりする。そこがこのどこまでも再現なく漂ってしまう”なんかわからないものが高尚で賢いんだぜ”という浮ついた気持ちを抑えて曲をビシッと引き締めたものにしているのではと思う。そう考えると曲の尺も5分に納めてくるあたりも確実に聴きやすさ、とっつきやすさを意識しているのではと思えてしまう。ボーカルが入っているのも良いと思う。特に叫ぶときはちょっとsyrup16gの五十嵐さんに似ていると思う。
ちなみに1st以前のEP「デート盤」も同時に買ったんだけど、そちらはやや持ったりとしたアングラサイケ強めに対して、こちらはロック感が強めてある。好みだろうが、わたし的にはフルアルバムの方のテイストが好みだ。こっちの方がソリッドだが個人的には陶酔感はこちらの方が強い。

「幻想文学はしっかりとした言葉でかけ」とおしゃったという澁澤龍彦さんの言葉を思い出した。なるほどな〜。そういった意味ではしっかりとしたロックの土台で描く幻想の世界だ。気になった人は是非どうぞ。

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