2017年3月26日日曜日

Break The Records presents War for Peace Vol.5@新宿Antiknock

日本は姫路のネオクラストバンドsekien(赤煙)が解散後、メンバーが新たに立ち上げたバンドがKUGURIDO。デモリリースでも話題を呼んでいたが、2017年満を辞してBreak The Recordsから、愛知は岡崎のハードコアバンドDIEAUDE(ダイオード)とのスプリット「叫鬥(「きょうとう」と読む)」をリリース。リリースを記念したライブが東京で行われることになった。KUGURIDOはこのライブが初ライブになる。つまり初ライブが地元の外。スプリットはそこまで聴き込めてなかったけど、sekienのライブはすごかったので新宿のAntiknockに見に行ってきた。
Coffinsのあたけさんが言っていたがなんとも形容しがたい取り合わせのライブだった。

NoLA
一番手は東京のNoLA。ライブを観るのは2回目かな。Redsheerとのスプリットリリース以来。改めて見るとその勢いに圧倒される。出している音としてはハードコアなのだろうけど、どうしてもドゥーム/スラッジの泥濘感があるような気がする。バンド名(Nolaはニューオーリンズ・ルイジアナの特定の音楽を指す言葉でもあるので)からの先入観もあるだろうが。しかしフレーズの語尾をだるい感じに引き延ばす感じ、そして何より速度のコントロール、というよりは低速パートはハードコアのそれというよりはスラッジのそれを彷彿とさせる。ただ早いだけではなくてハンマー投げの射出する前の状態のよう。つまり遠心力。思い何かをぐるぐるぶん回す。その楽しさがあるなと思った。ボーカルの人の動きも激しく一番手としてはうってつけのアクトだった。

No Excuse
続いて同じく東京を活動拠点にするハードコアバンドNo Excuse。Break The Recordsから音源をリリースしているらしい。この度初めて聞くし、見る。4人組のバンドでメンバーの立ち居振る舞い、衣装でハードコアパンクバンドだとわかる。調べてみるとジャパニーズ・ハードコアの系譜に連なる音楽を演奏するバンドで、とにかくストレートに攻めてくる。ドラムは勢いのあるD-Beat、ベースの音は尖り、ギターは分厚い中域が強調された温かみのある音であまりミュートを使わないハードコアらしい演奏。ジャパニーズ・ハードコアはとにかく恐ろしい伝統の世界、というような先入観があるのだけどこのバンドを見るととても親しみやすくて曲を知らなくても楽しめた。非常にキャッチー。ボーカルはひたすら叫んでいるのだけど、一つはメロディラインというかコード進行がそれとわかるような軽快なメロディアスさを持っていること。それから熱くそしてシンプルなシンガロングパートがある曲が多いこと。これは盛り上がる。性急な感じのギターソロも多めでかっこよかった。この間音源を聴いたThink Againに似ているけど、こちらの方がシンガロング多めでその代わりボーカルはよりハードコア。だけどむしろNo Excuseの方がキャッチーかも。

Terror Squad
続いては1992年に東京で結成されたスラッシュメタル/ハードコアバンド。私はこの間リリースされた兵庫のSwarrrmとのスプリットを持っているので聞いたことはある。ライブに行くにあたり他の音源も聴いてみようかなと思い、youtubeで調べたらヒップホップユニットのMVばっかりひっかかる。やって見て。
転換の時は明らかにベテランの佇まいだな〜と思っていたけど始まってみたら、めちゃくちゃ熱い。ボーカルの人はNoLAのボーカルと同じくらいアクティブだった。とにかく細かく早く刻むギターがスラッシー。スラッシュメタルだと思ったんだけど、よく聞くとそうじゃない、というかそれだけじゃない。まずボーカル、スラッシュならこんなに顔真っ赤にして叫ばない。そしてベース(ベースの人はMelvinsのバズみたい、もしくはガンズのスラッシュ。)はよくよく聞くとめっちゃグルーヴィ。かっちりしているけど根底にはMotorheadから連綿と続くロックンロールのグルーブがある。この縦横のノリを維持したまま速度を上げると、確かにハードコアっぽくも聞こえるから不思議。初めはギターの音量が小さいかな?と思ったけど次第に良い感じの仕上がりに。拳を振り上げるのが楽しかった。ボーカルの人の笑顔が素敵でした。

Coffins
次いで東京のオールドスクール・デスメタル、Coffins。結構見ている。つなりいろんなイベントに呼ばれているってことなんだろう。この日は割とハードコア色の強いイベントだったけど、このバンドはきちんと自分たちの役割をわかっている。いつも通り徹頭徹尾暗くて重たいデスメタルをプレイ。ただ比較的コンパクトな楽曲をプレイしていたと思う。這い回るような、引きずるようなドゥーミィなリフは間違いなくオールドスクール。重たく吐き捨てるボーカルに全くメロディがないので、剛腕リフをぶん回してそこにグルーブを生み出すバンド。一見全く優しくないのに棒立ちで聞くバンドではないのはひたすらすごい。この日はいつもより高音〜中音域のソロが映えていたように思う。特に中音でうごめくように弾くフレーズは個人的にはツボ。ドラムの人は軽く叩いているように見えるのになんで音があんなにでかくて、そして正確なのだろうか。Coffinsはライブのたびにドラムがすごいな、ドラム…ってなる。

DIEAUDE
さていよいよスプリットの片方、愛知は岡崎のダイオード!4人組のバンドでドラム、ベース、ギターに加えてボーカル。佇まいもそうだが鳴らす音もNo Excuseに似ている。つまりジャパニーズスタイルのハードコア。突進する演奏陣に野太く、男臭いボーカルが怒号を乗せる。No Excuseと違ってキャッチーさはない。シンガロングはあるんだけど頻度が少ないし、初見で乗るのはちょっと難しい。ロックの香りがするギターソロもない。その代わりミュートを多用したり、音の数が多かったり技巧的な「テクニカル」さではないが独特の音づかいをしていた。フロアは盛り上がっている。拳が振り立てられ、体の動きが激しい。私が感じたのは語弊があるかもしれないが「ヤンキー感」である。これは決して悪い意味ではない。そしてダサいという意味でもない。ただ東京で幅を利かせているお洒落と行かないまでも洗練された様式とは明確に異なる。粗野な勢いがある。頭で考えるけど、フィジカルにも重きを置いているようなアティテュードが感じられるような。その勢いというのがこのアウェイの地でも今までの経験に裏打ちされた自信ゆえだろうか、確固たるものとして私の目には何かしらの異質なものとして見えた。ライブを見て面白いのは「なんだか説明できないけどすごいものを見ている」という感動で半笑いになってステージを見上げる時なんだけど、この日はこのDIEAUDEはまさにそうだった。音自体はあくまでもハードコアで奇を衒うことは全然ないんだけど、何か別のものを感じてしまった。

KUGURIDO
続いては播州播磨、つまり兵庫の姫路のKUGURIDO。メンバーがこのバンド結成する前にやっていたsekienはすごかった。khmerの来日で見た時は両者の違いにネオクラストというのは考え方やアプローチであるのかなと思ったものだ。この日のバンドで唯一ボーカルが専任ではなく(ベーシストが歌う)、また唯一バンドのフラッグをステージに飾った。「HIMEJI CITY HARD CORE」と書かれたそのフラッグは東京の地で非常に誇り高く見えた。ドラム、ベース兼ボーカル、ギターの3人体制。この日が初ライブ。
実はこの日一番難しいバンドだったのでは。sekienに比較するとボーカルの登場頻度がやや減ったように思う。代わりにギターの変幻自在さが否応でも目立つ。とにかく1曲の中に多様なリフとフレーズが詰まっている。ただテクニカルかというとそんなことはない。ミュートをあまり多用しないリフはハードコア的だし、ボーカルがぶっきらぼうな分、ボーカルの後ろで、それからボーカルがないパートではそのメロディアスさを存分に発揮している。力強さと叙情性を併せ持つギターと酷薄といってもいいくらい前に進むボーカルの対比、ここはこの日SEとして繰り返しなっていたTragedyに似ている。ただネオクラストに対する回答がsekienだったように、やはりTragedy的であっても決してTragedyのコピーではないということだろうか。異形の新しさが”これから”の期待を煽る、そんなライブだった。

今回スプリットを出した主役の二つのバンドはともに東京から離れた土地で活動するバンドで、やはりどうしても東京のシーンとは違いがあるように思った。そしてその異質さこそが面白さなのでは。逆説的に東京がダサくて地方がクールだ、無論そんなことはない。存在しないユートピアとしての他所ではなく多様性の問題であって、この差異は例えば地方ごとに築かれたシーンの伝統(3la水谷さんより)にその要因を求めることができるだろう。「インターネットで均質化さ」れるとはよく聞くフレーズだが、均質化されているのはあくまでも受取手に過ぎないのではないかなと思った。多様性こそがきっとシーンを活性化させる。それは音楽だけではなく。そんなことを考えて楽しくなった。DIEAUDEのCDとKUGURIDOのT-シャツ(デザインがカッコ良いのよ〜)を買って帰宅。

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