2017年3月12日日曜日

TRAGEDY/TRAGEDY

アメリカ合衆国オレゴン州ポートランド(かつてはテネシー州メンフィスを拠点としていたとのこと)のハードコア/クラストバンドの1stアルバム。
TRAGEDYはやはりクラスト・ハードコアバンドHis Hero is Goneのメンバーらによって2000年に結成された。このアルバムはその結成の2000年に自身のレーベルTragedy Recordsからリリースされた。

この界隈では後続に多大な影響を与えたバンドで、その中でも1stと2ndが名盤!という声も多くあるとか。私は2nd、3rdと聴いていて正直なところ3rdがそこまで(2ndと比較してという意味でも)優れていないアルバムだと思うし、なんなら確かに暗くなっているけどそこまで変化したアルバムかな?と思ったり。そんな中1stが売っていたのでよしこれはと思って買った次第。
変な順番で聴いているからあれだけど、音楽的には1stからブレていない。叙情的なハードコアをやっている。クラストの持つ小汚くも(crustはかさぶたとか、そういった意味)激しい攻撃性を土台にある意味クラストから最も遠い、というよりは一見相入れそうにない感情的でメロディアスという要素を見事に両立しているバンド。ハードコアとメロディーに親和性がないわけでなくて、それこそメインストリームに近づくほどその傾向は強くなるんだけど、アンダーグラウンドの底流でそれができるのか。つまりそれをやっちゃってまだアンダーグラウンドでいられるの?的な野次馬な余計なお節介Lawがなんとなくへばりついている頭(見る方もやる方も)がひしめく中でそれをやってのけたのがTRAGEDYというバンドかもしれない。もちろんTRAGEDYがそれを単独でやったかというとそうではないだろうけど、みんなが驚くようなバランス(つまりとても多くの人の心に訴えかけた)を打ち立てのが彼らであって、だから後続に大きな影響を与えたバンドと言われるのかもしれない。そういった意味だと後続を聞いて入った人は別に真新しさを感じないのかもしれない。(私が3rd悪くないな…と思うのもここら辺ではと思ったり。)
そんなわけでいきなりシーンにどでかい一石を投じた記念碑的なアルバムであるこの1stなかなか緊張して再生ボタンを押すと、まずは短いイントロでアコギの旋律が流れる。続いて2曲め「Point of No Return」。このイントロでやられた。そうしてああみんなこうだったのでは、と思ってしまう。あれやっぱりTRAGEDYは必要以上に内省的にならなくてもいいじゃない…なんてすぐに思ってしまうのは私の軽薄さだろうが、それでもこの勢いにはやられてしまう。無骨でメタリックなリフはあくまでもクラストハードコアで一歩も引かない強さ。その直線的な”強さ”に曲線的に絡むのがツインギターの片方であって、それらが無骨な男の叫びと演奏にストーリーを与える。勢いよく拡散しがちなアトモスフィアをぎゅっと引き締める。割合シンプルな構成の曲にこれが一つの回答を与えたようにしっくりくる。全てが筋道だって見えてくる。キャッチーとはこのことか。つまり読み方をある程度教えてくれる。
やはり勢いなのかと言われるとしかし否と言いたいところ。やはり暗さの萌芽、内省の香りは感じ取れると思う。長めの曲(といっても3分から4分だけど)でHis Hero is Goneでも披露していた停滞した暗さというのはしっかり封じ込められている。ただテンポチェンジによってその鬱屈をむしろその後の疾走の助走、というか前段階に使っているからわーっとテンション上がってそこは忘れがちになってしまうのだが。TRAGEDYにしてはもちろんそこも曲で、3rd以降はそちらをもっと追求したいということだったのかな、と思う。

2nd、3rdも好きだけどやはり初めて聴く人に一枚渡すならこのアルバムかな…と思ってしまう。なんというか納得感を感じてしまったアルバム。

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