2017年4月16日日曜日

THIS GIFT IS A CURSE ×SeeK Split CD Release Japan Tour 2017 孔鴉@新大久保アースダム

スウェーデンのストックホルムにTHIS GIFT IS A CURSEというバンドがいる。2015年にリリースされた2ndアルバム「All Hail the Swinelord」を聞いた初めての印象は”うるさい”。そんな彼らが来日するらしい。日本は大阪のSeeKというバンドとスプリット音源をリリースするらしいのだ。そんな日本ツアーの1日目に言ってきた。孔鴉は大阪のSeeKとStubborn Fatherの企画である。この日のメンツは日本の特定の種類のハードコアバンドを一堂に集めたイヴェントということもあって個人的にはとても楽しみだった。なんせ8バンドが出演するのだから。孔には穴という他に隠れ家という意味があるらしい、孔鴉とは鴉穴、鴉の隠れ家と言った意味だろうか。この日はさながら鴉のテリトリーで鴉の大集会が行われたわけである。なんとも不吉じゃないか。
場所は新大久保アースダム。このライブハウスには独特の匂いがするが、この日さらにここに新しい匂いが追加されることになる。

Stubborn Father
一発目は企画主のバンドの片方。大阪のStubborn Father。自前のライトを持ち込みそれのみ使うなど音だけでなく見せ方にもこだわりがある。見るのは2回目だと思う。基本的には日本の激情といったスタイルでアルペジオに代表される感情豊かなパートと低音を効かせた轟音パートを織り交ぜたハードコアを演奏する。展開がすげーなと思って観ていたが、わかりやすいのがドラムで1曲の中でのアイディアというか叩き方のバリエーションがものすごく豊富。変拍子なのかどうかわからないのか、ドラムの叩き方のセット(リフみたいな)がコロコロ変わる。多分2つか3つでもあれば十分なんだろうが、惜しみなくアイディアをぶち込んでくる。ギターとベースもそれに合わせて表情を変えてくる。そうすると曲もいよいよ双極性的な不安定さを帯びてくる。逆光気味のライトの中ぴったりとした衣装で長い手足を動かす専任ボーカルの動きは不吉でかっこいい。イヴェントの挨拶がわりにはもってこいの演奏だった。

REDSHEER
続いては東京のREDSHEER。やはり激情らしい音を鳴らすが、Stubbornに比べれば音の方は非常にソリッドにきっちりまとめている。鈍器というよりは研ぎ澄まされた刃なのだろうが、経験豊かなメンバーによって作り出される音は初期衝動を超越したどっしりした迫力のあるもの。いぶし銀といえばそうなのだが、こちらのバンドはまともになるどころか思春期でずれ出したマインドがそのままずれまくってとんでもないところまできてしまった感じがある。あえていうなら雑味がある音で曲の中に色々な葛藤や感情が溶け込んでいる。渦巻く感情を一度るつぼに放り込んでドロドロに溶かし、異常な集中力で一つの形に再整形したかのような趣があって、ところどころに生々しい感情の由来を感じ取ることができる。MCは肩の力が抜けたリラックスしたものだが、演奏の方は凄まじい。ベースボーカルの小野里さんの荒い息もそうだが、raoさんのドラムがすごいなと思った。一発入魂みたいなテンションを曲の間ずっと保っている。涼しい顔で叩くベテランとは明らかに一線を画す。ぶっ倒れるんじゃないか、っていう雰囲気である。ドラムの手数の多さ、そして曲に込められた陰鬱な感情という意味ではやっぱりToday is the Dayに通じるところがあるなと思った。かっこいい。今度ツーマンをやるとのこと。

kallaqri
続いては青森のバンドkallaqri。メンバーはみんな若く見える。ベースが二人いるのが特徴で片方の方はいわゆる普通のベースらしい仕事をするのだが、もう片方は結構変態的なことをやっていた。タッピングを始めギターのような奏法をしたり、ベースとは思えないような音を出したりと。結構テクニカルなわけなんだけど音の方はというとやはり日本の激情方面を彷彿とさせる。モダンなテクニックでアップデートしているものの出している音は完全に激情スタイルで温故知新という感じ。きらびやかなギターとベースの轟音の間に日本歌詞を叫ぶボーカルは日本の絵もバイオレンスの延長線上に乗ったもので、VA「Till Your Death」収録の曲を最後に演奏したのだが、スポークンワード、アルペジオが導く静のパートが印象的で、このジャンルのこれからを担うバンドなのではと思った。

Trikorona
続いては日本のハードコアバンドTrikorona。最近出したBroilerとのスプリットが話題になっていたりするバンドだけど音を聞くのも、見るのもこの日が初めて。ドラム、ベース、ギター、ボーカルの4人組なんだけど弦楽の二人はエフェクターの数が多め。(この日のバンドはみんなエフェクター多めだったが。)さらにテルミンもセットしているから一体どんな音を出すのかワクワクしていたが、いざ音が出て見るとびっくりした。まず激情じゃないな。短くめまぐるしい。個人的には音の迫力もあってグラインドコアっぽいと思った。調べて見るとパワーバイオレンスもしくはエモバイオレンスということらしいのだが、なるほど、頷ける部分とその範疇に入らない部分があると思う。めまぐるしい演奏にボーカルが何個かの音節を吐き出すように叫ぶ姿はパワーバイオレンスっぽいがスラッジパートがない。(スラッジパートがないパワーバイオレンスもあるのでこれだけでパワーバイオレンスっぽくないとは言えないが)代わりにノイズ成分を多めに曲に打ち込んでいる。ギターの人がノイズ担当なのだが、ギターのエフェクト過剰とノイズが同一曲線状に繋がっていていつの間にかノイジーなギターがハーシュノイズに溶解している。テルミンもバンドの持つ変態性をゆんゆん増している。そしてボーカルが常軌を逸していて、見た目はちょっとゆるい感じのお兄さんなのだが、全身を使って叫ぶ。それも無表情で。大抵こういうバンドでは叫ぶということもあって表情が豊かになるもんだが(笑顔の人も結構多い)、この人は常に無表情。睨むのではないが目が座っていて、そして無表情。笑っている人が怖いとはよく聞くけど、無表情でシャウトする人の方がこええかも!と思った。

weepray
続いては東京のハードコアweepray。見るのは2回目かな。6ヶ月ぶりのライブということでした。このバンドも自前の光源を持ち込んでいるのが、Stubbornと違ってこちらは白熱灯で温かみがある。基本的にはアルペジオを多用する激情系の音だよね〜と思っていたのだが、あれれ前見たときと印象が結構違う。もっと速度が遅くなっている。ダークでグルーミー。そしてアルペジオの響きももっと陰鬱になっている。前見た時より演奏がかっちりしていると思った。低音でドン!とぶちかますようなモダンなハードコア色も取り入れて暴力性も増している。フロアの方も相当盛り上がっていた。結果モダンハードコアに魂を売り渡したのか、とはならずによくよく聴いて見ると激情を自分たちなりの新解釈でやっているのだった。だからかなり感情的で(といっても明確に暗い方に舵をきっている)退廃的な陰鬱さは遅さにあっているし、見た目にも気を使うし化粧していることもあって昔のヴィジュアル系のような耽美さの匂いをかすかに感じ取れた。かっこいいぜ、これは。遅くてかっこいのが好きなのでもっと見たいし、いよいよ作るという音源にも期待が高まる。

isolate
続いては東京のハードコアバンドisolate。ブラッケンドなハードコアをやっている。歌詞は日本語でやはり激情スタイルの影響が色濃いのだが結果的にだいぶ先鋭的なことをやっている。音だけ聞くと絶望感しかないような、ブラッケンドなトレモロリフで全てを塗りつぶしたような救いのないような音なのだが、その轟音で張り上げるボーカルが良い。ある意味演奏と喧嘩しているようにぶつかっているんだけど、そこに葛藤があってこのバンドの持ち味になっていると思う。ボーカルの安藤さんはMCではまっすぐだが、歌っている姿は結構おっかない。アルバム名が「ヒビノコト」となっているようにこのバンドはいろんな感情をあえて削ぎ落とさずに全部ぶち込んでいる。REDSHEERもそうだが、私はそういったバンドが大好きなんでこの日も鳴り響く轟音の中でそんな彼らを見上げていた。私のだけでない、突き上げられる拳が爽快だった。weeprayとのツーマンが企画されているとのこと。

Seek
続いては企画の主催のもう一方。大阪のSeeK。見るのも聞くのも初めてでした。このバンドもベースが二人いる変わった編成。最近やっとこギターが加入する前は長いことベース二人で活動していたようだ。そういうこともあって同じくダブルベースのkallaqriとはベースの使い方が結構異なる。こちらも一方のベースがいわゆる単音引きの普通のベースの役割をするのは同じ。ただフレットレスベースを使い、裏方を支えるという以上に表情豊かに動いていた。もう一方のベーシストは(おそらく)6弦のベースを用いていて、それをギターのようにコードで引くというスタイル。それもほぼほぼ引き倒すようなトレモロスタイル。考えれば弦の太さが違うだけなんで基本的にはギターの働きもできるんだな、と思うようにした、私は。ギターの人はえらく強面だが、かなり空間的な音を出していて攻撃性はもちろんだが、もっと奥行きのある音を組み立てるのに一役買っていた印象。(ちなみにこの方TGICのギターの音を直してあげたり、物販ではすごく丁寧だったりととても良い人でした。)音的には余計なものを削ぎ落としている印象でひたすらソリッド。展開や技巧(相当難しいことをやっているのだと思うのですが)という激情の要素はあまり感じられず、ひたすらトレモロで突き進むスタイル。ただ低音が強調された音の壁で持って圧殺するので美麗や耽美さはなく結構荒廃している音風景で、そこに美意識を見出すタイプ。息のあった低速パートがライブで見ていると気持ちが良い。

THIS GIFT IS A CURSE
続いては本日の主役ストックホルムからの刺客。4人組だったのがギターが一人加入したようだ。ドラムの人が丸刈りの坊主頭で、後のメンバーはクラスティーナ長髪。またドラム以外のメンバーはメンバーのロゴが入ったお揃いの上着を着ている。客電が落ちるとフィードバックノイズの中でボーカルがステージに座り込んで何かやっている。どうも何かの液体を体になすりつけているみたい。なんとも言えない匂い(正露丸みたいな、と言われていた。)がアースダムに充満、それとともにみんな「あ、これやばいやつ」と思ったのではなかろうか。これから儀式が始まるんだなと。
音の方はというと激烈でギターがずっと引き倒している。そういった意味ではブラックメタルなのだろうが、とにかく音の方は重く、またトレモロリフのメロディ性が強調されないのでそういった意味ではハードコアだ。結果的にはうるせー音楽になる。CDでも五月蝿かったが、生で聴くと輪にかけてうるさい。(私は耳栓してなかったので尚更)物理的に耳が痛い最高だ。壁のような音を作り出す様式はそれこそSeeKやisolateに通じるところもあるが、こっちの方が辛い。なぜかというと前述の二つのバンド、それから日本のバンドはどうしても別の要素を取り込んで楽曲を構成するが(その別の要素が激情を激情たらしめる音的な特徴なのだろうか)、このバンドは基本的にそういったものをほぼ入れない。一つのスタイルで持って最初っから最後まで突き通すようなピュアさがある。ジャンルは違うがkhanateめいたトーチャー感。臆面のない異常さ。禍々しさ。葛藤云々ももちろんあるのだろうが、振り切った、あるいはそれらを振り捨てた攻撃性が魅力。ボーカルも終始叫びっぱなしで逃げ場がない。音的には低速パートなんかを入れてそこらへんはCult Leaderにも通じるクラスト臭があり、一種の清涼剤的な?非常に良かった。あとはドラムが明快で割とそこにも爽快感がある。あとは暗黒。瘴気(もはや物理的な臭気)に当てられてふらふらになりながらなんとか物販でT-シャツを買う。お釣りの100円玉がないぞ、とあたふたするギター氏が唯一の癒しポイントでした。

ということでMCでもあったがこの手のバンドが一堂に会したという意味で非常に濃厚なイヴェントでした。ある意味この間ENDONが「エヴァンゲリオンごっこ」と煽ったDisに対する回答がこの日だったのではなかろうか。ごっこのつけ入る隙なんてなかったですね。この日がツアー初日で都内もまだライブがありますんで迷っている人は是非どうぞ。
しかし8バンドは流石に書くのが大変!!!!!

0 件のコメント:

コメントを投稿