2017年8月20日日曜日

Guilty Forest & MOCHI presents Under The Surface Vol.4@東高円寺二万電圧

暑いのが苦手なのでしばらくライブに行かずにいたのだが、気になるバンドがいくつか出演するイベントがあるというので参加してきた。
主催の一方であるGuilty Forestとは同名の音楽レビューサイトでまずサイト名が良い。おそらくCoaltar of the Deepersの曲からとったのだと思うが。今は休止中のようだが昔から愛読していて、このブログがきっかけで購入した音源も少なからずある。そんな人とそのお友達(のMochiさん、この方はこの前までプロの音楽ライターだったようだ。)が主催するのだから良い企画に違いないのだが、私が参加するのは今回4回目が初めてである。「表層の下」という規格名通り、アンダーグランドと呼ばれるバンドを集めた企画。面白いのは結構ジャンルがバラバラのようだ。私がきちんと音源を持って聞いたことがあるのはRedsheerとSunday Bloody Sundayだけ。その二つをみるのはもちろん名前は知っているものの気になっているバンド、名前すら知らなかったバンドも名を連ねており、これは良い感じである。雨の予報だったが開演少し前にギリギリ降られずにつくことができた。しかし雷鳴がすごくまさに嵐の予感を孕んだ、むしろこの手のジャンルには吉兆のような幕開けだった。

Redsheer
一番手はRedsheer。このバンドはカオティックでとてもストレートとは言い切れないのだが無駄な装飾が一切ない。むき出しという感じがしていて、それも暗いし陰鬱といった音楽性なのだがなぜだか心にビシビシくる。ハードコアなので高揚感があるが、いわゆる血気盛んなそれらと違ってじんわり私に細胞に音が浸透してくる。ライブだと特に。
いつもただただ圧倒されるのがドラムなのだが、今日よく聞いてみると相当複雑ではなかろうか。三拍子だったり、色々な音がなっていてそもそも何ビートなのかわからなかったりする。それが同じ曲の中でコロコロ表情を変えていく。派手な必殺技を出してくるのではなく地の部分がすでに複雑なのだ。それに乗っかるギターも3人体制という布陣の弱点を補って余りある分厚さである。おそらくだが一度に低弦の数が多い。だからRedsheerの音はただただ低音によっているわけではなく、厚みのある音の中に高音から低音までがぎっしり詰まっている。こちらもテクニカルなソロを弾くわけではないが、いくつもの展開をめまぐるしく(余り感じさせないのがすごい)変えていく。とにかく表情豊かなバンドなのだが、こういう音の作り方も絶対その完成形に一役買っているはず。
曲全体では渦巻きのように落ち込んでいくのだが、決死のボーカルの絶叫はその落下に抵抗しているように思える。だから退廃的(いわば理想形としての美しい後退)というよりは血が通っている(時になりふり構わない生々しさ)し、むしろ絶望的(な抵抗)とも言える。それが良い。非常に良い。1000の安い応援ソングよりも私の心を打つ。今日もかっこよかった。

Punhalada
続いては名古屋のバンドPunhalada。ブラジルと日本の混成バンドとのこと。バンド名はポルトガル語で「刺す」という意味だと思う。みるのも聞くのも初めて。おどろおどろしいアートワークからオールドスクール・デスメタルバンドかと思っていたが、半分正解だった。ボーカルの方がブラジルの方だろう。がっしりとした巨躯にカリカリの頭髪はさすがに日本人離れしている。
Redsheerと比べると圧倒的に音がかっちりしている。鈍重なデスメタルというよりはかっちりとしたクロスオーバー・スラッシュという感じでザクザク刻んでいくギターに吐き捨て型のボーカルが乗っていくストロングなスタイル。びっくりしたのはギターの方とベースの方のボーカルの入れ方。力強いシャウトなのだが、これが曲に圧倒的なハードコア感をプラスしている。今年何回か見ているいわゆるジャパニーズ・スタイルのハードコアを彷彿とさせる。そういえば短く生き急いでるようなギターソロもメタル的というよりはハードコア的な情緒に溢れている。曲は直感的でわかりやすいのだが、展開があって特に曲の速度の転換を非常に効果的に使っている。一気に加速するところはめちゃかっこいい。かっちりしている曲と、ボーカルの(いい意味での)汚さが良い対比でなるほどこれが理想的なクロスオーバーか!と思った。フロアも盛り上がっていて踊る人突っ込む人がいた。ボーカルの人もフロアに降りてきて楽しそう。東京でのライブは久しぶりと言っていたが、この間みたDieaudeのように距離があるとやっぱり型にはまらない異質さがあると思う。それが新鮮。

Ry
3人組でギター兼ボーカルの人はエレキギターに加えてアコースティックギターも持っている。前の二つのバンドとは明らかに異なる佇まいで、アコースティックギターを大胆に用いた曲からスタート。足元のペダル類の数の多さがすごくて(この日ペダル多めのバンド多し)、アコギでも色々なエフェクトをかけている。伸びやかなボーカルも高めの声でクリーンで歌い上げるまさにゆったりという感じで夢見心地かな?と思っていたが、ドラムが入ってくるとすぐにその認識が間違っていることに気がついた。もちろん優しさ、美しさはあるけど同時に力強さもあって、フォーキーというよりはやはりポストロックである。ボーカルが多めで頭でっかちでインテリな感じのそれとは違い、歌も多めでもっと直感的である。ゆったりしているが音はそれなりに大きく、曲もよく動く。エレキギターに持ち変えるとさすがにロック然とするが、それでもエフェクトの使い方は絶妙で切ない音がよく伸びる。この伸びるというのが非常に気持ちよくて時にはシューゲイザーに振り切ったAlcestを感じさせたり。キラキラした音質は繊細で太陽そのものというよりは葉叢から差し込む日光のように程よく拡散していて優しい。

Sunday Bloody Sunday
続いてはみるの久しぶりで楽しみだったSunday Bloody Sunday。佇まいから完全にグランジな感じでかっこいい。3人組のバンドで去年リリースした1stアルバムは本当いろんな人が絶賛している。オルタナティブとは昨今でも聞くが、グランジというのは概ね過去の音楽を指す言葉になりつつある昨今、現行でグランジな音を鳴らすバンド。
音のデカさではない(十分でかいんだけど)轟音という感じで中身がぎゅっと詰まった厚みのある低音、キャラキャラした高音を縦横に行き来する。ずっしりとしているが肉体的でよく動くし、リフではミュートを多用するがやはりメタルとは一線を画す音楽性。この音楽性の秘密はなんだろうね?やはり中域が出ているギターに秘密がありそうなものなんだけど。高音の使い方もよくなじんでいてそこらへんもあるきがする。楽器の音が肉厚な感じなので泥濘感も結果的にストーナーな雰囲気を醸成しない。転調はあるけどドラムのビートは非常に力強いがビートは非常にシンプルってこともあるかも。ザラついているが艶っぽい、それは重たい楽器隊と対比をなすボーカルによるところが大きい。ハリと伸びがある、ちょっと幼さの残る声質で、声というのはいじったり作ったりが難しい(特にシャウトを多用しないと)ので本当にtalentだと思う。新曲も披露してフロアはかなり盛り上がり。

The Creator of
続いてはThe Creator of。1994年に結成されたバンドで昔は日本で言うところのモダンヘヴィネス、向こうで言うニューメタルへの日本からの回答という音楽性で確か当時熱心に見てたハングアウトとかの深夜番組でPVを見たことがある。ニューメタルといっても洗練されたそれというよりはグランジを乗り越えたねっとりしたもの。その後活動を休止したのだが、2009年ごろに再始動。かなり音楽性が変わったことをそれこそGuilty Forestで読んで気になっていた。この日は1年半ぶりのライブということだった。まずバンドの背後、ライブハウスの壁の全面を覆うように白い布が張りわたされる。自前のフラッグを掲げるのではなく無地。これはVJを使う感じである。メンバーはギターの二人のエフェクターの量が多分この日一番多い。ボーカル兼任のメンバーはそれ覚えられるのですか?というくらい。
始まってみるとポストロックに一番似ているが、やはり肉体的(この日この要素が共通していておそらく主催の二人の好みなのだろうな〜と思った)で次々に展開を変えていく洗練されてオシャレ感が漂うバンドとは明らかに一線を画す。もっと荒涼としていて、とにかく非常にミニマルである。静かなメロディにならないフレーズを反復していき、音のレイヤーをどんどん厚くしていく。それが執拗に繰り返され、徐々に、非常にゆっくりその姿を変えていく。ピアノなどの楽器(ひょっとしたらレフェクターをかけたギターかも)も使っているが、派手なきらびやかさはなくひたすら潜行するよう。ボーカルが入る曲はボコーダーを使いとにかく人間性を排除している。スクリーンには幾何学模様が浮かび続け、幾何学はつまり数学的であるからなんとなく巨大な機械が唸りを上げる空間にたまたま迷い込んでしまったような感じがする。ひたすらマシーンかというとギターの音は強烈で、むしろミニマルな地平線にかすかに、しかし力強く夜明けの予感のような感情が見えてそこがかっこよかった。

割礼
ラストを飾るのは割礼。バンド名は知っているがみるのも聞くのも初めてである。1983年に結成されたバンドでメンバーを変更しつつ現在まで活動し続けるバンドのようだ。最近だとborisとライブをやったりで名前は知っていて、マニアックなサイケデリックバンドかな…と思っていた、がこれもやっぱり半分違った。
メンバーは4人だが全員今までのバンドとは佇まいが全然違う。さすがに私より年上のバンドでみなさん泰然としている。このメンツでは割礼が異質なのだろうが全く動じていない。ボーカルの方はとにかく一番変わっていて転換の時から行動がゆっく〜りしている。メモを見ながらアンプのつまみを「ムムム」という感じで設定しているところを見て、大変失礼ながら「だだだ大丈夫か?」なんて思ってしまったがライトが落ちて曲が始まってみるととんでもない化け物だったという話。まず音がでかいわけだけど、実際の音量という意味では前述のバンドの方が大きい。エフェクトはかけているものの生々しさの残る音はどれも非常にソリッドである。音の数はそこまで多くないのだが、どれもここにある最適の音という感じで主張が半端がない。そしてサイケデリックなバンドというよりは、非常にメロディアスな歌ものバンドといったも良い音楽性である。ただそれが非常に遅いのだ。ドゥームのような遅鈍と違うのは音の軽さ、音の密度、そして何よりドラムのビートは遅くなく(早くもない)、そこに乗る弦楽隊がゆったりとしている。いわば二つの時間軸が存在するのだが、それがきちんとそうであるように同時に存在している。ちょっとわけがわからない。ボーカルの方は異様な声をしていてゆったりとした見た目からは到底想像できないハリのある声、そしてまだまだ幼さの残る妖艶なもの。ビブラートをかかって怪しく歌い上げる。ギターソロは多めだがサイケデリックのように高速で弾きまくるというよりは、ノイズの領域に時に突っ込んでいくような縦横無尽なもので、こちらも緩急、ゆっくりの怪しさがある。ミニマルな演奏の中まるで無軌道にかけていくが、歌と同じでとてもメロディアス。前人未到の秘境といった孤高を感じさせるが、高尚な仙人というよりはずっと長いことやっていたら前人未到の地にいました、という自然な感じ。まさに泰然自若。おっかねえ。ビリビリするのだがメロディアスで、とにかく妖しい!

流行りのバンドを集める、というのではなく好きなバンドを集めるからみんな見てくれよ!という気持ち、つまり自分の好きな音楽を人にも共有したいという中学生くらいの頃からあるあの自然な気持ちが素直に現れていて非常に楽しかった。バリエーションがあって、色々なジャンルに跨っているのだけどどのバンドも非常に肉体的、というところが共通項だったと思う。規格名通りマニアックで楽しかった。ライブハウスを出ると雨も止んでてラッキー、という気持ちで爽やかに帰宅。

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